サッカー的な散文【footballshoegazer’s blog】

鹿児島ユナイテッドファンです。東京でベンチャー企業を経営しています。サッカーについて、好き勝手に書こうと思います。

王国の敗北

今回のブラジルはつまらないと言われてきた。

しかし、強いとも。

僕はそんなにブラジルが好きではないが、

それでも、今回ばかしは、ブラジルが優勝すると予想していた。

守備重視で、監督がドゥンガで、

ロナウジーニョを外すほどの本気度。

リアリズムを追求したブラジル。

あのブラジルが、守備的になって、チームがまとまったとしたら、

いったいどこのどんな国が撃破することができるというのだ。

無理だ。

裸足でチャリンコと100メートル走するようなものだ。

前半は、軽く衝撃を覚えた。

あのオランダが、全く何もできずに、

ただ自陣のゴール前で、フラストレーションを募らせながらボールを見送っていた。

オランダの攻撃時には、ディフェンスとハーフが守備ブロックを構築し、

シュートさえ打たせずに、奪ったボールで速攻に出る。

右からマイコンが上がっては、左からロビーニョが仕掛ける。

何か、グローバル化時代におけるポストモダンサッカーの完成系を見ているかのようだった。

それが、見事に崩れた後半。

今大会すべての試合で先攻逃げ切りに成功してきたブラジルは、

追いつかれるという、いわば当たり前の状況に慣れていなかった。

セットプレーからのオウンゴールという、不運なハプニング、

そんな偶然に対応できるだけの、精神力と冷静さが欠けていた。

強いが故の、経験不足が生んだ脆さを露呈した。

再びの、セットプレーからの得点を許した後、

フィールドの上には、ブラジルの姿はなかった。

愚かな退場と、焦燥感が生む全くらしくない浅いプレー。

王国の敗北。

ドゥンガがピッチにいれば、結果は違ったかもしれない。

だが、今の王国には、強靭なハートでチームを鼓舞する選手がいなかった。

加えて、ロナウジーニョアドリアーノの不在が、最後に効いた。

一点を追う展開、交代枠を一つ残しながらも、勝負を決めにいける選手がいないために、

状況を変えることができなかった。

ブラジルが本気になって、自分たちのスタイルを変えてまで優勝のタイトルを取りにきた今大会。

僕は何か、サッカーの神様がブラジルをたしなめたような感覚を覚えた。

ブラジルともあろうものが、それは違うぞと。

守備的な布陣がほとんど自明のものと化した現代サッカーにおいても、

ブラジルだけは、その潮流から遠くは慣れた場所でサッカーボールと遊んでいてほしいと。

超然とした王者の風格を漂わせながらも、子供のように無邪気に楽しそうに

二大会連続でベスト8という「屈辱」。

王者はこれからどのように変わるのだろう。

美しさを求めるか、勝利を求めるか、両方か。

どのようなスタイルをとり、どのように世界をリードしていこうと目論むのか。

2014年、ブラジルワールドカップ。