ハードボイルド鳥栖フットボール
まるでクリント・イーストウッドの映画をみているかのようだった。
鳥栖の無骨でタフなサッカーにすっかり魅了されてしまった。
それは、「サッカー」ではなく、「フットボール」であった。
スローイン、ロングボール、アーリークロス、ボールの描く、ゴールまでの最短の架け橋。
そういえば、確かに、そうだ、サッカーとは、ゴールにボールをブチ込むスポーツであった。
鳥栖はそんな単純な事実を思い出させてくれた。
マイケル・ポーターは、戦略とは業界におけるポジショニングであるという。
外的環境で、場を上手に選ぶことが必要という話だ。
第二世代のバーニーは、リソース・ベースト・ビュー(RBV)という、経営資源やケイパビリティ(経営資源を活用できる能力)によって競争優位性を立つという戦略論を提唱した。
鳥栖のそれは、その第一世代と第二世代の不毛な議論に終止符を打った。
そのJリーグにおいて異質な、超現実主義的ポジショニングと、チームの内リソースを最大限いかしたフットボール。
戦略を愚直なまでに実行に移す意思の力。
戦略の上位概念は、理念や哲学であるが、鳥栖のロングボールには、哲学が宿っていた。
また、鳥栖の最後まで諦めない気持ちは、純粋に感動した。
あのモチベーションは何なのだろう。
本当に優勝を諦めていなかったのか。
ACL出場なのか。
なぜあそこまで、戦うことができるのだろう。
執念と、プライドと、生き様と。
鳥栖は九州の誇りだ。
男たるものかくあるべしと、戦士たちは背中で語っていた。
こうして、全てはシナリオ通りに進んでいった。
遂に、ガンバが首位にたった。
12月の寒空に、煌々と三カ星が輝いているのがみえる。
すべてはおおいなる予定調和へとむかっているのだ。