サッカー的な散文【footballshoegazer’s blog】

鹿児島ユナイテッドファンです。東京でベンチャー企業を経営しています。サッカーについて、好き勝手に書こうと思います。

日本対香港戦と、空気の研究

前回の中国戦後の遠藤曰く

「日本人の悪いくせが出た」

生殺しにあったかのようなつまらないスコアレスドローの2試合。

良くも悪くも日本人は空気に敏感だ。

その意味で、サッカー日本代表は日本社会を反映しているともいえる。

ルールやコンセプトを忠実に守るあまり、創造性を欠いた、サラリーマンの日常の反復のようなプレーに終始する。

リスクを冒し、失敗することを恐れるあまり、無難な選択に徹する。

まさに今の世相を反映した、我らが日本代表だ。

何がベスト4だ。

と、前の2試合を観て苛立ちを覚えつつ、迎えた今日の香港戦。

程よいカタルシスを含んだ、面白い試合だった。

結果は3ー0であったが、もう2点ぐらい入っていてもおかしくない展開だったと思う。

前半は、4-4-2を保ちつつ、完全に自陣に引いた香港相手に、冷たく吹きすさぶ雨と、なかなか・の入らないことへの焦りからか、堅苦しい空気が、国立競技場の器の中に充満していた。

しかし、後半から平山が入り、平山をターゲットとしたプレーが増えるにつれ、だんだんと試合に躍動感が出てくる。

17分に小笠原が抜けて稲本が入り、直後のトゥーリオの追加点からは、

雨空が晴れたかのように楽しいリズムが鳴り始める。

もう何より、遠藤保仁の凄さが出ていた。

正直、ガンバで神のようなプレーを観ていると、

代表での遠藤は本当の意味で良さが出ていないように感じていた。

長谷部とのコンビでは、対長谷部で、6-4ぐらいで遠藤が後ろに構えていたように思う。

しばしば、バランサーと形容される選手である。

チームのハーモニーを重視して、あまり自我を主張しないプレーに徹しているのではないか。

変な例えだが、ビートルズにおける、リンゴスターのような立ち位置かもしれない。

良い意味で、空気を読む選手だと思う。

稲本が入り、守備に専念したお陰で、そんな遠藤が自由に動き回り始め、トップの位置にまで入るようになった。

本当に、相手のポジションの隙間を突くのが上手い。

何度も何度もサイドでフリーになっているシーンがあり、パスさえくればといった感じであった。

神出鬼没な動きを、チームメイトすら捉えられていないと思える。

「あー、二川が入れば」と何度も呟く。

なにはともあれ、ガンバでの本来の動きを表現できていたのは、代表にとっても大きな強みとなるに違いない。

また、稲本の、大人なプレーも良かった。

長谷部、遠藤は不動だとして、第三のボランチのポジション争いは、

無難なプレーをした今野ではなく、稲本が一歩リードしたのではないか。

小笠原は、不安な俊輔の対抗馬といった位置づけだろうが、ボランチも出来るからか、安定感があって、チームに落ち着きを与えていると思う。

中盤に流動性をもたらすという意味では、かなり期待できるのではないか。

ただ、攻撃面では、まだそんなに光る表現ができていない。

憲剛は、ミスが多くてイライラした。

周りの選手と、プレーのアイディアが共有できていないのではと感じた。

ただ、シュートの精度と意識では、完全に中盤で勝っていた。

激戦区の中盤では、降格最前線にいると思われる、香川。

今まで、香川のどこが良いのかは分からなかったし、あまり興味なかったが、良いじゃないですか。

動きにキレがあって、劣化したメッシのようにも映った。

今期のJ1でどんなプレーを見せてくれるのか注目したい。

そんなこんなの日本代表。

日曜、聖バレンタインデーの夜に日韓戦を迎える。

優勝は中国になりそうな気がするが、今日みたいな楽しくてアツいプレーを期待したい。

空気感のために個を殺すのではなく、

それぞれがアドリブを交えた自己表現を行いつつも、

全体として、調和のとれた美しいハーモニーを奏でてほしいと願う。

もちろん、美しいだけではない、勝利への意志の導く、歓喜交響曲を。